研究活動
独立行政法人科学技術振興機構社会技術研究開発センター(JST)

「脳科学と社会」研究開発領域 計画型研究開発「日本における子供の認知・行動発達に影響を与える要因の解明」
平成16(2004)年度〜平成20(2008)年度
通称:『すくすくコホート』“Japan Children’s Study(JCS)”(『すくすくコホート三重』『武庫川チャイルドスタディ』を含む)


 『すくすくコホート』は世界で初めて子どもたちの社会性の発達を明らかにするために、脳科学・医学・心理学・教育学・疫学・統計学など領域を架橋して学際的に行う世界的にも注目されている国家プロジェクトとして発足しました。社会性とは「相手の気持ちがわかること」、「相手の立場に立てること」、「良好なコミュニケーションをとり、円滑に社会生活を送ることができること」と表現することができます。子どもたちの社会性の発達は一人ひとり多様なパターンが予想されますが、その変化のようすにどのような特徴があるのかを明らかにすることが本プロジェクトの目標として掲げられたものです。21世紀に入り、子どもたちを取りまく環境はどんどん変化しています。家族形態の変化、地域社会の変化、多様なメディアとの接触など著しい社会の変化がどのように子どもたちの発達に影響を与えているかを、小児科学、脳神経科学、心理学、教育学、疫学、統計学などの分野から、学際的に、科学的な手法を使って明らかにしようという試みです。

 子どもたちの社会性の発達を科学するということは、その証拠を挙げるために客観的な観察、すなわち、測定(測度)が必要であり、そこで社会性をどのように測定するかが重要な問題となります。現状では子どもの社会性を測定する方法は確立しておらず、単一の方法では測定できないため、いくつかの側面からそれぞれ複数の測定を行い、それを統合して社会性の発達の程度を規定することが議論されました。そして、このプロジェクトでは社会性を1.主体性、2.応答性、3.共感性、4.感情抑制、5.運動制御、6.気になる行動の各側面について、医師観察、発達心理的測定、行動認知的測定、社会性発達計測を含む観察によって測定し、それらを統合することにしました。さらに、社会性の発達に影響を与える環境要因を測定するために多くの質問を含む質問票を作成しました。観察は大阪、三重で生後4ヶ月、9ヶ月、1歳半、2歳半および鳥取で5歳、6歳、7歳時点で行いました。

 本研究が行ったコホート研究という手法は、実際に子どもたちの成長の経過を追って観察する手法のことを言います。簡単に言うと0歳で生まれた子どもをその成長過程を追って観察していく方法で、たいへんな時間と労力が必要になる研究です。そのために、研究に参加いただくご家族の長期的な協力、行政や関連機関の支援、観察場所の設定や人材確保など多方面から研究環境を整えることが必要となりました。そのなかで学術的な2つの視点:①科学的に解明する②研究アプローチの独自性という課題に直面しました。

 一人ひとりの子どもがもっている可能性を、最大限に生かせるような育児環境を提案することがこの研究の目標のひとつです。『すくすくコホート』からは具体的方策作りに役立つ膨大なデータが得られます。これによって、子どもの社会性の発達のようすがはじめて明らかになっていく可能性があります。また、この研究プロジェクトがコホート研究(追跡研究)であることは、これまで観察した項目について時間を遡って解析し、統計モデルを作って明らかにしていくことが可能になる利点があげられ、多様な発達パターンが生じる因果関係を明確にするためには最も特徴的な点でした。

 しかし、この研究は3年間の基礎研究実施後に大規模コホート研究へ移行する予定でしたが、中間評価の結果、さらに研究手法や実施方法を検討する必要性があることが判明したため、平成21年3月まで基礎研究に重点をおいて取りまとめることとなりました。平成20年度に終了後、得られたデータの解析と論文化を目的としてJCS委員会を新たに設置して研究を引き継ぎ、データセットの作成、データ解析、データアーカイブ化に向けての検討を行いさらに2年間の活動を終了させました。

●すくすくコホートにおける領域架橋のイメージ図 ●すくすくコホートにおける研究体制図

◆ウェブニュース
(すくすくコホート三重 平成21年6月1日発行 JST News)
http://www.jst.go.jp/pr/jst-news/2009/2009-06/page07.html 
 
JST社会技術研究開発センター 追跡調査報告書(PDF)平成16(2004)年度〜平成20(2008)年度
http://www.ristex.jp/archives/follow-up/pdf/H24_tsuiseki_chousa_report_02.pdf




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